2013年3月27日水曜日

ムーンライズ・キングダム(Moonrise Kingdom)/2012年アメリカ

 
ムーンライズ・キングダム(Moonrise Kingdom)
2012年
アメリカ
94分
群像劇
PG-12
 

◎第65回カンヌ国際映画祭オープニング&コペティション部門正式出品作品
◎2012年度アカデミー賞脚本賞ノミネート

監督 ウェス・アンダーソン
脚本 ウェス・アンダーソン
    ロマン・コッポラ
製作 ウェス・アンダーソン
    ジェレミー・ドーソン
    スティーヴン・M・レイルズ
    スコット・ルーディン
製作総指揮 サム・ホフマン
音楽 アレクサンドル・デスプラ
衣装デザイン  カシア・ワリッカ=メイモン
撮影 ロバート・D・イェーマン
編集 アンドリュー・ワイスブラム
翻訳  石田泰子

出演
ジャレッド・ギルマン:サム
カーラ・ヘイワード:スージー・ビショップ
ブルース・ウィルス:シャープ警部
エドワード・ノートン:ランディ・ウォード隊長
ビル・マーレイ:ウォルト・ビショップ
フランシス・マクドーンド:ローラ・ビショップ
ティルダ・スウィントン:福祉局
ヘイソン・シュワルツマン:ベン
ボブ・バラバン:ナレーター



■名言・迷言
「僕と結婚してくれてありがとう」
by サム

■あらすじ
1965年、ニューイングランド沖の小島「ニューペンザンス島」。
ここで12歳の少年少女が恋に落ちた。
ボーイスカウトの眼鏡の少年、サム(ジャレッド・ギルマン)
ピンクのワンピースと無愛想な表情のスージー (カーラ・ヘイワード)

1年前、教会で「ノアの箱舟」のお芝居を上演していたスージーは、
ボーイスカウトの一環で観に来たサムと出会う。
共にアウトサイダーだった二人は意気投合。
そこから文通を始め、ひそかに駆け落ちを計画していたのだった。

突如書き置きを残してボーイスカウトキャンプから失踪したサム。
母のローラ(フランシス・マクドーンド) とシャープ警部(ブルース・ウィルス)の
浮気現場を双眼鏡で目撃してしまうスージー。
二人を追う情けない大人たちと子どもたち。

サムとスージーは草原で落ち合い、
原住民のチックチョー族が大移動した道に沿って
秘密の場所“ムーンライズ・キングダム”を目指す…。

まるでドールハウスか絵本のような、
毒ッ気のある「おとなになるまで」の物語です。


■M田感想(ネタバレ)
最初、スージーの家がドールハウスかと思ってしまいました。
一時停止でじっくり観察したい色彩美。
ティルダ・スウィントン演じるソーシャルワーカーが
真っ青一色の制服だったり、
サムの里親たちの台所が
マスタードの色調だったり。
場面ごとにはっきりと
色合いを分けています。
テントは特注っていうんだから、こだわりは相当なもの。

全体的に黄色のレイヤーをかけているような、
どこか懐かしく愛らしい風合いは
おとぎ話の挿絵のごとし。

またフォントを効果的に使っていて、
タイトルロゴはもちろん、
スタッフの名前や
サムとスージーの手紙など
文字にこだわっていたように思います。

そしてボーイスカウトキャンプの机のシーンからも
分かるように、随所で
真正面から撮影しているシーンが印象的です。

フレンチ・タッチというそうで。
エンドロールを
ベンジャミン・ブリテンの『青少年のための管弦楽入門』のような
オリジナル曲で締めくくる演出も良い。

そしてなんてったって、サムとスージーの初々しさと瑞々しさが可愛らしい。
サム役のジャレッド・ギルマン君も
スージー役のカーラ・ヘイワードちゃんも
共にプロとしてデビュー作。

特にスージーのミニワンピースがですね、
色っぽいのです。
わざと奇抜なブルーのアイシャドウと
単色のサーモンピンクと
白のハイソックスがクラシックで良い。
滅多に笑わないところもクール。

サムはアライグマのワッペンといい、
被りものといい、小物が可愛い。
誰よりも多いワッペンで隊長っぽいのに
どこか馴染めていないのが苦しいところです。

ちなみに彼ら、半年以上のオーディションを勝ち抜いた後、
ロケ先へ到着する前にもう脚本を隅まで覚えてしまったそう。
さらに、実際に文通をするよう監督に指示され
作品では未完成の手紙は
彼らによって完結しているそうです。観たい!

この映画のテーマと言われているのが
ひと夏の冒険
父と息子

ふむ。
大人への階段を上ろうとするサムとスージーが主体ですが、
私としては
サムと里親たちの関係が気になったところです。
トレーラーハウスで長年孤独に暮らしていたシャープ警部が
里親を一喝するシーン。
里親から見放されてしまうと、サムは精神鑑定や電気ショック療法を
受けることになってしまうからです。
それからサムを預かるというシャープ警部は、
ここで初めて家族を手に入れます。

トレーラーハウスでビールを乾杯するシャープ警部とサム(こらこら)。
“おとなになる”ってなんだろう。
 それをひたすら考えさせられた映画だったなあ。
成人しても、結婚しても、子どもを産んでも、
孤独は埋められない。
だからこそ、駆け落ちするサムとスージーを
みんなが応援したくなるんだろう。
まるで自分を重ねるように、結婚の真似ごとを真剣にやる。

ムーンライズ・キングダムの生活はあっけなく終わってしまったけれど、
「いい場所を選んだな」という台詞(確かではありませんが)からも
サムたちにとって素晴らしい経験になったのだろうと思います。

監督が「ノーマンロックウェルが描くアメリカをイメージした」と言っていますが、
皆がイノセントだった最後の時代という印象からだそう。


日本語字幕付きが円盤化したら買いたい作品です。
おとなになりたい10代、おとなになりかけの20代、
こどもを忘れかけている世代に観てほしい。

0 件のコメント:

コメントを投稿